観劇日記:『パイパー』
NODA・MAP『パイパー』に行ってきました。NODA・MAPも観に行くのは3回目。ようやく台詞回しの早さにも馴染んできたかなぁ(^^; 記憶がホットなうちにエントリー。
赤土と氷河、天空には地球が…。
1000年後の火星で、何が起きていたのか?
火星は人類の憧れであり、希望の星だった。
その初の火星移住者たちのあふれんばかりの夢が、どのように変貌を遂げていくのか。
そして、人々と共に火星に移住した「パイパー」なる生物?機械?
人間?もまた、人類の夢と共に変貌を遂げる。
そして1000年後の火星。
今回も言葉遊びがキーになっていたり、ちりばめられたテーマがヘビーだったり、と頭を回しながらのあっという間の2時間でした。というか、観終わった後若干疲れてました(^^;
火星に移住した地球人。幸せの度合いを示す基準としてパイパー値
なるものが使われていて、移住した人間達は幸せの最高値を目指して生活を始めていく。そもそも幸せなんて、尺度も感じ方も人それぞれなのに、数値で決められるものなのか? というか、数値を上げることだけが生きていく目的なのか? パンフの冒頭に野田英樹のメッセージとして、幸せは、人間の病いである
と書いてある。何か取り憑かれてるのかもしれないですね。幸せって奴に。
火星に移住した人々は鎖骨におはじき
を埋め込まれて、その人の人生を記録していく。おはじきを鎖骨にあてることでその日との記憶を追体験することができるのだけれど、ワタナベはキムにその映像を記憶させていく。きれいな出来事だけを選択してみせていくワタナベ。ワタナベと共に暮らすダイモスも身の回りのことしか知らない。意図的に操作された情報とその裏にある真実。真実の重みと、信じるべきは自分で感じた、見たことなのかなと思います。
火星での食料は地球からの人工食料、しかも野菜といった生きているものを食べることは認めないという設定なのですが、リワインドによって食料のつきてきた極限状況で、人は何を食べるのか? 人が人であるために必要なことは?
印象に残った台詞がいくつかあって、「オレを幸せにしたいなら、それを持ってこい」というのがありました。上のテーマにも繋がる台詞で何気なく発せられてるだけに怖い部分がありましたね。あとは「絶望もないけど、希望も無い。どちらも絵空事だ」という台詞かな。
次から次へと投げかけられるメッセージは、どれも重たいものばかり。パイパー値が2009を示す瞬間があったり、現代を暗示するような台詞があったりして、暗い雰囲気も漂う舞台でした。けれど、絶望も希望もどちらも絵空事かもしれないけれど、希望は現実になり、何かが生まれることに期待している、どこか明るさや希望を感じさせるラストでした。
舞台ならではだなぁと思ったシーンは、ラスト近くのフォボスとフォボスの母が放浪するシーン。背景も無く真っ暗に近い状態で、延々二人がその場の情景を細切れの単語で綴っていくのは、逆にこちらがその情景を想像させてくれて、多分映像にしちゃったら面白くないんだろうなぁと思いましたね。
パイパーを演じていたコンドルズの皆さんも、軽々と踊るような滑らかな動作があったり、かといえば後半は激しい破壊者になったりと、動きが面白かったです。
色々と考えさせられる舞台でしたが、本当に面白かったです。