観劇日記:『90ミニッツ』

先日、PARCO劇場で『90ミニッツ』を観てきました。三谷作品は、2007年以来でしょうか。三谷作品で、西村雅彦と近藤芳正の二人芝居といえば、『笑の大学』ですが、今回も負けないくらい面白かったです。

インタビューによれば、笑いは控えたとのことで、クスっとする程度の笑う箇所はあるものの、全体としてはシリアスな雰囲気。

今回のテーマは「倫理」です。 それぞれがそれぞれの立場で「正しい」選択をしなければならない。しかし、それは一方から見れば、「やってはいけないこと」であったりします。例えば、職業であったり、あるいは宗教や、家の家訓、国のイデオロギーの違いでも起こりうること。しかし、時と場合によっては、その「倫理」を越えたところで、行動しなければならないこともあるかもしれません。

90ミニッツ|PARCO劇場|パルコ劇場

あらすじも掲載されていないようですので、ネタバレ注意な続きで。

交通事故にあった息子のところに駆けつけた父親と、整形外科副部長の男が登場人物。信仰上の理由で、手術の承諾書にサインが出来ない父親。二人とも息子の命を助けたい、という点では一致しているのに… 説得を試みる副部長と、これにあらがう父親。その間にも息子の容態は刻一刻と悪化していく、というストーリー。

対立する二人というのは『笑の大学』の構図と一緒ですが、『笑の大学』では完全に目的が異なる二人だったのに対して、今回は二人の目的自体は一緒だけど、「やってはいけないこと」がそれぞれ異なるわけです。

前半たたみかけるように説得してた副部長側が、後半逆転されるところは、さすがシチュエーションコメディを得意とする三谷幸喜ならではでした。結末も『笑の大学』と違って、重たい、観客に問いかけるものでした。

信仰と病院側の立場、家族愛と職業倫理… それらが軸になって進んでいくのですけど、お互いの醜い姿と思いを告白し、それでもなお迷い、苦しみ、下した最終的な決断すらも、新たな後悔と苦しみに繋がってしまう。それはとてもつらいことだけれど、それもまた人が受け入れていかないことなのかもしれませんね。パンフレットにある、あなたの運命は、瞬間ごとの決意によって作られている – アンソニー・ロビンズ の通りだと思います。

人は何を規範にして生きていくべきか、ということを問うお芝居でした。


18. 12月 2011 by Castaway。
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